「更新オプション」:契約更新をオーナーに強制させる権利 | Reloredac.com

「更新オプション」:契約更新をオーナーに強制させる権利


米国における商業不動産の賃貸借契約は、一般的に定期借家契約(契約期間が定められており、自動更新されない契約)です。契約更新にはテナント、オーナーの双方合意の基、新たに契約を結び直す(再契約する)必要があります。

そのため、テナントが契約更新を望んでいても、オーナー都合で応じない事態が発生し得ります。例えば、同じフロアの大型テナントが拡張用に貴社オフィススペースを欲しがっている場合、オーナーは大型テナントを優先し、貴社との契約更新に応じない可能性が高まります。

このような場合、賃貸借契約書内に「Renewal Option」(あるいはOption to Renew、Renewal Clause)と呼ばれる「更新オプション」が入っていると、テナントは強制的にオーナーに契約更新を応じさせることが可能です。

 

 

賃貸借契約書内の更新オプションの項目には、一般的に、以下のポイントが定められています。

 

●通知期限

テナントが更新オプションの行使を希望する場合、いつまでにオーナーに書面で通知しなければならないかが定められています。マーケット毎に異なりますが、契約期限の6~12ヵ月前が一般的です。ギリギリまで他の選択肢を比較検討出来るため、通知期限が契約期限に近い程テナントにとって有利になります。

 

●契約期間

更新オプションを行使した場合の契約期間は、事前に定めてられていることが一般的です(現契約期間と同期間、あるいは5年間など)。

 

●契約賃料

契約賃料は事前に定められることもありますが、より一般的なのは「Fair Market Value」、つまり行使時点でのマーケット相場を基にする、という形です。実際には、周辺の同レベルのビルなどを参考に、テナント、オーナー双方合意の基でFair Market Valueが決められます。万が一、合意に至らなかった場合には、第三者の調停者の意見を基に定めることになります。

 

このように更新オプションはテナントにとって有利な権利ですが、デメリットがない訳ではありません。

テナントは、先に更新オプションを行使する意思をオーナーに通知した上で、契約賃料を交渉することになるため、どうしても交渉レバレッジは低くなってしまいます。また、予め賃貸借契約書内で、更新オプション行使時にはフリーレント期間はなし、オーナー提供工事費もなし、などと決められていることも良くあるケースです。

間違い易いのは、更新オプションを保有していないからといって、契約更新出来ない訳ではない、という点です。オーナーが契約更新を望んでいれば、通常の更新交渉は勿論可能です。

従って、たとえ更新オプションを保有していたとしても先ずは行使せず、行使期限前に時間的な余裕を持って、更新交渉における最大のレバレッジである移転の可能性を示唆しながら、オーナーと通常の更新交渉をすることが重要です。オーナーがなんらかの理由で更新に応じず、テナントがどうしても更新したい場合に限り、行使期限前に更新オプションを行使することをお勧めします。

自らの手足を縛ることになる更新オプションを賃貸借契約書内に含めないオーナーが増えていることは確かです。ただ、現オフィスの内装仕様やインフラ設備に多額の資金を掛けた企業にとっては、オーナー都合による望まぬ移転は避けたいところです。契約期限時の選択肢を確保するためにも、商業不動産ブローカーを窓口として、更新オプションを賃貸借契約書内に含めるように交渉し、条件内容を不動産弁護士と協業しながら詰めてみて下さい。

 

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