激動の米国賃貸マーケット 2021年夏【後編】 | Reloredac.com

激動の米国賃貸マーケット 2021年夏【後編】

ポストコロナで生じた駐在員住宅の問題点

当記事の前編でもご説明しました通り、ここ最近賃貸物件数が減少しており、条件に合う物件を見つけることが非常に難しくなっています。やや極端な例を挙げると、予算が3000ドルだったとして、条件に合う物件として出てきたものが2500ドルか3500ドルの2件。かたや安すぎて治安面で心配、一方は予算を大きくオーバーした華美な物件、という感じで、物件があっても妥当性に欠ける選択肢しかないケースもあります。タイミングによっては、次に価格の近い物件と数百ドルもの差があり、同価格帯の数件の中から1つを選ぶのとは違った苦労もあります。

この様に物件が見つからない事で、「一時滞在が長期化」しており、企業にとっては見込み以上の出費に直面、赴任者にとってもなかなか腰が落ちつけられない状況となっています。また物件が少ない事で競争が発生して賃料が引き上げられ、現行の補助額ではとても足りない、というケースもあるため、ご赴任者から企業に対して「家賃補助の引き上げ」を求める声が挙がっています。そして、物件は見つかったものの「中途解約条項がつかない」、または契約更新時に「中途解約がなくなった」や、「更新後の賃料が大幅に値上げされる」などの問題も起きています。

更新時の賃料値上げについての例ですが、NY郊外のロングアイランドで、一戸建ての更新に際して、$300以上の値上げを提示され、高過ぎると交渉した所、大家側は「受け入れられないなら家を売るので退去して」と言われたケースがありました。特に郊外は売買が非常に好調で、賃貸物件探しが難しい事から、物件売却を示唆されることで家賃の大幅値上げを飲まざるを得ない状況となり、個人負担または企業にとっての追加コストとなっています。

 

 

今、企業にできることは?

1|まずは冷静に状況を「把握」

(1)家賃相場の把握

現在の賃貸マーケット状況について、まずは冷静に状況を正しく理解・把握することが肝要です。家賃補助の引き上げなどが本当に必要なのかの判断材料を収集する事になると思います。色々な情報ソースがありますが、ポイントは相場を「正確に把握」することです。家賃補助額は、一度引き上げると今後来る他の赴任者にも適用される事になるので、正確な情報が求められます。

 

(2)自社規程の把握

動きの大きいエリアによっては、更新時の大幅値上がりを会社負担としたり、物件確保のため家賃補助の上振れを認める、一時滞在の期間延長を認めるなどの措置が必要になる場合もあるかと思いますが、その場合、社内のルールとして特別対応を取る場合の基準や、どういったステップが必要になるのか、決済までにどれ程の時間を要するかなどを把握しておく事も重要です。また、トレンドの変化により契約条件、特に中途解約に関する条件は大きく変化する可能性もありますので、自社規程の柔軟性などを事前に確認されることをお勧めします。

 

(3)居住実態の把握

少なからずコロナの影響でエリアの治安や環境に変化があったかと思います。また、リモートワークにより居住エリアや物件の嗜好性も変化しました。そのようなこともあり、現在御社の駐在員がどのエリアに居住しているか?また、そのエリアが適切なのか?や、居住エリアの特性を含めた観点で情報を把握されておくと家賃補助の見直しを検討する上で参考となるかと思います。例えば、賃貸アパートが多いエリアなのか?戸建てが多いエリアなのか?学校区、そして帯同世帯に適したエリアなのか?など、いくつかの観点をもとに理解されておくと、日本側ないし駐在員本人から家賃補助に関する説明を求められた際にも役立ちます。

 

2|そして変化に「備える」

(1)専門家の起用

“米国でのクレジットヒストリーのない外国人”という立場で、数ある他のテナント候補に競り勝つのは非常に困難です。加えて中途解約条項もつけたいとなると契約の難易度は更に上がります。賃貸アパートは業者を使わなくても個人で申し込み可能ですが、必要な知識・適度な交渉を心得た不動産のプロを使う事で他のテナント候補に競り勝てる可能性はグッと上がります。

 

(2)赴任者の支援

与信審査が厳しくなった事で、レターの書式が貸し手側から指定される場合も出てきています。企業によっては所定の雇用証明レターしか対応できないという事もありますが、それが理由で申し込みができないケースも出てきています。可能な限り柔軟に対応いただいたり、必要と分かっているものは早くから準備をしておくなどの対応が求められます。尚、収入証明の提出に際して、米国内での収入がまだない赴任者は、日本の源泉徴収などを提出することになりますが、その場合は英訳も必要になります。必要な場合に誰が英訳するか?なども考えておけると、いざという時に然るべき対応ができるでしょう。

 

(3)情報ソースの確保

コロナショックからマーケットが落ち着くまでまだ今しばらく時間がかかると思われます。正確な賃貸マーケット概況や、他社がどう対応しているかなどの情報を、タイムリーに得られる環境を整えておかれることをお薦めします。

 

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