「オフィス移転か、契約更新か?」パート2 ~ CREアドバイザリーサービス
現オフィスの契約期限が迫る中、最初に担当者を悩ませるのは「オフィスを移転すべきか、あるいはこのまま契約更新すべきか?」という方向性をいかに定めるかだと思います。そこで、2回に分けて、方向性の社内検討・策定段階で参考に成り得る「オフィス移転のメリット・デメリット」(逆に言うと、契約更新のデメリット・メリット)を挙げてみたいと思います。パート1「オフィス移転のメリット(⇔契約更新のデメリット)」は、こちらをご参照下さい。
オフィス移転のデメリット(⇔契約更新のメリット)
1、高額な初期費用が掛かる
2、オーナー、及びビルマネジメントの質が未知数
3、ホールドオーバーのリスク、二重家賃の負担
4、従業員の離職に繋がるリスク
5、担当者の業務負荷が大きく、本業に支障を来たす可能性
以下、各ポイントの簡単な解説です。
1、高額な初期費用が掛かる
オフィス設営のための初期費用は、内装工事費、設計・デザイン費用、データ・ボイスケーブルの構内配線工事費、ITシステムの敷設費用、引越し代、新規に購入するオフィス家具代など、非常に高額になります。
2、オーナー、及びビルマネジメントの質が未知数
現オフィスのオーナー、及びビルマネジメントと良好な関係を築けていることは契約更新を選択する1つの要因と成り得ます。一方、オフィスを移転する場合、移転先のオーナー、及びビルマネジメントとの関係を新たに1から築く必要が出て来ます。また、問題発生時の対応の迅速さなど、実際に入居してから初めて分かる点も多くあります。
3、ホールドオーバーのリスク、二重家賃の負担
移転先オフィスの内装工事が完了せず、現オフィスを契約期限までに明け渡すことが出来ない場合には「ホールドオーバー」と見なされ、現契約賃料の2~3倍の支払い義務に加え、現オーナーへの賠償責任が発生するリスクがあります。契約期限までの時間的な余裕がない場合や、移転先スペースに既存テナントがいて内装工事開始が遅れる可能性がある場合には、特に注意が必要です。
これに加えて、移転先オフィスの賃料支払い開始のタイミングによっては、一時的に新旧両物件に家賃を支払う必要が出るため、キャッシュフローに大きなインパクトを与える可能性があります。また、例えフリーレント期間を利用することによってキャッシュフローにインパクトが出ない場合でも、会計上は移転先の契約開始日から実質家賃(※契約期間の家賃総額を契約期間の月数で割り戻したものから、フリーレントの総額を月数で割り戻したものを差し引いた額)を毎月計上するため、いずれにしても二重家賃が発生することになります。
4、従業員の離職に繋がるリスク
日系企業が軽視しがちなリスクですが、現地従業員にとって通勤の利便性は非常に重要です。特に他エリアへオフィスを移転する場合には離職の可能性を考慮し、その対策を検討する必要が出て来ます。
5、担当者の業務負荷が大きく、本業に支障を来たす可能性
契約更新の場合、ブローカー同士による書面を用いての基本条件交渉、及び弁護士同士によるAmendment(現契約書からの修正条項)のリーガルチェック・文言調整が、契約締結までの主な流れになります。一方、オフィス移転の場合、方針検討・策定を始め、候補物件視察、ブローカー・弁護士による契約交渉、オフィスレイアウトの決定、内装設計・施工、各種専門業者の選定・契約、オフィス家具の選定・購入、引越しなど、入居まで数多くの手間と時間が掛かるため、担当者の本業に支障を来たしてしまうこともしばしばです。
以上が、主なオフィス移転のデメリット(⇔契約更新のメリット)です。
勿論、両選択肢が有り得る場合には、オフィス移転/契約更新交渉を同時並行で進めることをお勧めします。その場合、契約更新における最大の交渉レバレッジはオフィス移転の可能性になるため、時間にゆとりを持って現オフィスのオーナーと更新交渉を開始することが非常に重要です。そうすることで、万が一、現オーナーとの更新交渉が難航し、条件合意に至らなくても、余裕を持ってオフィス移転へと方針転換することが可能になります。
オフィス移転/ 契約更新の方向性に関して最適な判断を下すためには、周辺オフィスビルの最新賃料相場や、両選択肢における賃料総額・移転関連コストを含めた費用比較など、様々な情報を入手することが大切です。最適な判断を下すためにも、方針の検討段階から、顧客視点に立って客観的な情報を提供出来る商業不動産のプロフェッショナルを活用してみて下さい。
オフィスの移転・契約更新に関するお問合せはこちら>>