心温まる多言語・多文化共生コミュニティでの暮らし
私が住んでいるルーズベルトアイランドは「マンハッタンにもっとも近いアメリカの郊外」と呼ばれています。マンハッタンから地下鉄Fラインで一駅、またはケーブルカーでイーストリバーを渡ると、そこはマンハッタンの喧騒が嘘のような穏やかで静かな住宅街です。ルーズベルトアイランドはマンハッタンの46丁目から85丁目に向かい合った、長さ3.2キロ、幅は広いところで240メートルという小さな島ですが、さまざまな国のさまざまな言葉を話す1万人を超える人々が仲良く暮らしています。
リダックの貴船治実さんに紹介していただいた私のアパートでも英語はもちろん、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語、タイ語、日本語など世界各国の言葉が飛び交っています。私の部屋から見渡せるサッカーグラウンドでは朝から夜遅くまで島の老若男女がサッカーの練習や試合を楽しんでいます。
島在住の若い夫婦が障害を持った赤ちゃんを昨年末に出産し懸命な治療の甲斐もなくこの4月に亡くなったときには、治療代とお葬式代を募るネット募金に対して何百人という人が協力をして、あっと云う間に目標額を達成してしまいました。
4月30日には島の日本人会が主催する恒例のサクラフェスティバルが行われ、日本人だけでなく日本人以外の関係者も参加して、島内のギャラリーと野外特設会場でそれぞれブース展示とイベントが行われました。
また、ルーズベルトアイランドには、WIREというコミュニティ新聞があります。2週間に1度発行されているのですが、そのなかで日本人に関する心温まる記事が掲載されました。
ニューヨーク市では、満4歳になる子どもは、その年の9月からら始ま年度(School Year)のPre-Kプログラム(就学前プログラム)に参加する権利があります。ところが、数年前からルーズベルトアイランドではこの年齢の子どもが増え、島内の小学校(PS217と呼ばれています)のPre-Kの枠が不足して、地下鉄やバスで遠隔地の学校に通わなければならない子どもが増えていたそうなのです。そこで、ペレアさんという対象年齢のお子さんを持つお母さんが中心となって島内の住人にアンケートを募り、その結果を手紙とともにルーズベルトアイランド選出の市議会議員他関係者に送ったところ、本年度PS217のPre-Kへの50人分の参加枠を新たなに獲得できたということです。この記事は、ペレアさんというお母さんが知り合いの日本人夫婦に協力してもらった結果、島内の日本人コミュニティにも調査を呼びかけることができたこと、さらにスペイン語、フランス語、中国語、日本語、韓国語、ロシア語で調査への回答を呼びかけるポスターを作って島の各アパートに張り出したと書いています。そして、この日本人夫婦は名前を出さないで欲しいと希望したそうなので、匿名になっています。
何だか日本人らしいし、それをさりげなく書いてくれた、この島のコミュニティ新聞にもとっても親しみを覚えました。
ルーズベルトアイランドは、こんな出来事が毎日のように起きる心温まる多言語・多文化共生コミュニティです。
(コロンビア大学勤務 M様)