ニュージャージーで加熱する2つの不動産市場とは
今回は2つの活気ある業界が注目するニュージャージー市場の最新情報をお伝えしたいと思います。
賃料が高騰するインダストリアル物件市場
膨大な人口を有するトライステート(Tri-State: ニューヨーク、ニュージャージ、コネチカット)への物流の要所として位置するニュージャージー(以下NJ)。様々な投資家から注目を集めており、賃料急騰や前例にない空室率低下を記録するなど、NJのインダストリアル物件市場(倉庫、Flex物件など)が加熱しています。
NJやNYの商業不動産を手掛けるNAI James E. Hansonによると、NJ北部の昨年のインダストリアル物件の売却価格は一平方フィート当たり$202と、2020年と比べて35%上昇しました。また、昨年のインダストリアル物件の取引面積は16.8ミリオン平方フィートに上り、平均還元利回り(キャップレート)は5.3%となりました。
その中で注目を集めた取引の一つに、不動産投資会社のCenterPoint Properties(イリノイ州)が昨夏、274,430平方フィート(一平方フィート当たり$332)を超えるFedEx施設(サウス・ブランスウィック郡区)を9100万ドルで購入した取引が話題となりました。また昨年12月には不動産投資のFaropoint社(NJ州)が654,633平方フィートに上る10棟(NJ北部のバーゲン郡やモリス郡)を1億3250万ドルで購入した取引も注目を浴びています。
こうした需要増加の背景に、Eコマースの拡大や安定したサプライ・チェーンを確保するための倉庫増床ニーズがあります。そのため老朽化が進み機能性が低い倉庫まで売買されているほど例年にない供給不足に陥っており、賃料が押し上げられています。
不動産サービス大手のCBREのメアリー・ラング氏は、「NJを含めた全米上位15の物流不動産市場で著しい賃料の上昇が見られ、今後5年間で賃料が25~35%上昇する」と予想しています。また、「NJへの不動産投資が初めてという投資家の誘致も州政府が力を入れている」とも話しています。
CoStar Advisory Servicesのシニアコンサルタントのジュアン・アリアス氏は「特に港の近くや『ラストマイル』と呼ばれる消費者に一番近い配送地点への投資は賃料の上昇が顕著で、長期的な投資にも魅力的。たとえ還元利回りが低くても、ロケーションが良ければ投資すべき」と強調しています。そのため、還元利回りが3%以内でも、「日本やヨーロッパなど海外からの投資も近年増えつつある」と言及しています。
イノベーション・テクノロジー・ハブ(出典:REAL ESTATE NJ)
ライフサイエンス業界の発展と共に成長するNJ
医薬を中心とするライフサイエンスの最先端としてのもう一つの顔を持つNJ。ライフサイエンスの発展を担うプレイヤーとして、従来のデベロッパーとは一線を画すDEVCO(NJ州)をご紹介します。NPOとしての立場から行政や大学などのニーズとデベロッパーとを繋ぎ、様々なコミュニティの再開発に携わっています。
DEVCO は、2019年に完成した劇場・オフィス・住居などを兼ね備えたニューブランズウィック・パフォーミング・アートセンターの建設や、ゲートウェイ・プロジェクトと呼ばれるストックトン大学のアトランティックシティ・キャンパスやオフィスの建設を手掛けるなどして名を馳せました。企業や住宅、レストラン、エンターテイメント、教育機関の複合建設を通して、地元経済の活性化を図り、コミュニティ全体の繁栄に繋げているところが魅力的です。
昨年からは医療関連のRWJBarnabas Healthや国立がんセンターのRutgers Cancer Instituteと手を組んで、アートセンターと同じニューブランズウィックエリアで医療現場と研究所を兼ね備えた癌治療センターの建設に携わっています。同センターは11階建て(52万平方フィート)で、完成は2024年を予定しています。
さらに、同エリアでNJのマーフィー州知事の施策と連携し、イノベーション・テクノロジー・ハブの建設も手掛けています。そこでは、メディカルスクールやRutgers大学の研究施設のほか、研究者とスタート・アップ企業や起業家とを繋ぐ研究施設などが建設される予定です。サイズは55万平方フィートで、完成予定は2025年です。完成後には、ライフサイエンスのさらなる発展のみならず、地元地域の繁栄にも大きく貢献するものと期待されています。
インダストリアル物件市場を牽引するEコマース、そしてライフサイエンスと今活気を見せる2つの業界が熱い視線を注ぐNJ市場から今後も目が離せません。
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