ポストコロナのリクルーティング① ~アメリカの人材マーケット最新トレンド~
新型コロナのオミクロン株の爆発的な感染拡大が落ち着き始めたアメリカでは、労働力不足が大きな問題となっており、「Great Resignation (大量退職)」と呼ばれております。そして、各企業は採用やリテンションに対する大きなチャレンジに直面する事となりましたが、具体的にどの様な状況になっているのかという事を紐解いていきましょう。その情報を基に、皆さまのポストコロナに向けた採用・組織戦略を立てる上でのご参考にしていただけたら幸いです。
▶Great Resignation (大量退職)に関する参考情報はコチラ(動画)
求職者優位の就労マーケット
U.S. Labor of Statics(米国労働統計庁)の情報によると、2021年の8月に430万人にも及ぶ労働者が退職しましたが、それはアメリカの労働人口の約7%にも及ぶとされており、翌月の9月には更に440万人もの退職者が出たという結果でした。少し別の角度でアメリカの雇用状況を見てみると、2021年8月の求人件数(Job Openings)が1,040万件だったのに対して就職者は740万人でしたが、コロナ前である2019年12月の数字を見ると、求人件数が590万件だったのに対して就職者は580万人でした。この数字を見ると2021年8月の数字が平常時とは大きく異なる事が分かるかと思いますが、大幅な売り手市場となってしまいます。雇用環境がこれ程に大きく変化したのは第二次世界大戦以来とされており、現状がいかに異常事態なのかという事が再認識されます。
解雇者を上回る自主退職者数
まず、その退職者の詳細を見ると、これまでの推移は次の様になっています。(単位:千人|U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)
こちらを見ると、新型コロナの大流行が発生してロックダウンがあった2020年に解雇者(Discharges)が一気に増加しており、同時に、自主退職者(Quits)は例年よりも減少している事が分かります。2021年に入ってからは、退職者の総数(Total Separation)は、退職者同様にこれまで(2020年以外)の上昇曲線に沿った形の人数となっている一方で、解雇者が例年(2020年以外)よりも低い人数となっています。つまり、退職者の総数に対する自主退職者の比率が通常よりも極めて高い状況になっているという事になりますが、2020年と2021年の推移を見ると、この様になっています。(単位:千人|U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)
この推移を見ても、2021年の自主退職者がいかに多いのか、正確に表現すると「退職者総数に対する自主退職者の比率の高さ」が伺えます。
全国的には回復を見せる失業率
また、こういった話になるとよく耳にするのが失業率(Unemployment Rate)ですが、アメリカの失業率の推移は次の様になっています。(単位:パーセント|U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)
このグラフの通り、コロナが始まる前は「完全雇用」といわれており、2019年の平均は3.7%と過去10年でも最も良い数字となっていました。その間、最も数字が悪かったのは2010年の9.6% であり、それまでの推移であった約5%の倍になっていました。2016年から2019年は5%を切っている状態でした。
その後、新型コロナの爆発的な感染拡大が始まった事によって2020年4月には近年最悪となる14.7%を記録し、8月までは10%を超えている状況でした。2020年10月以降は7%を下回る状況が続き、2021年9月からようやく5%を下回る事になりました。その後、2021年12月には3.9%まで回復し、「全国的」に見ればコロナ前と同水準となりました。
州によって大きく異なる失業率の回復度合い
なぜ「全国的に」という部分を強調したのかと言いますと、州によって失業率の数値が大きく異なるからです。在米日系企業の多いエリアの数位を見ると、次の様になっています。(単位:パーセント|U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)
この様に、南部(GA, TX=黄線)や中西部(IL, MI=緑線)は数値が元々低い、あるいは更に低くなってきている一方で、北東部(NY, NJ, MA=青線)や西部(CA=赤線)は元々の数値が高い、あるいは減少傾向はあるものの、あまり低い数値になっていない傾向が見受けられます。(MAが12月に大幅に下がっている事を除く)
この地域差は業種の違いによって生じる部分があり、製造業などのブルーカラーの仕事が多い南部や中西部では、ロックダウン時も継続してオペレーションが続いていた事に対して、北東部や西部ではホワイトカラーの仕事が多いなどと言われています。そのため、全国的な失業率を参考にすると現状を見間違えてしまう事になりかねないため、この様な数字はエリアごとにみて行くのが良いと考えられます。
▶ 各雇用指標の詳細レポートに関する情報はコチラ(サイト)
この様に、現在、自主退職者の割合が今までに無い程に大きくなっている事や、地域ごとに失業者の状況が異なる事が分かりましたが、
- なぜ自主退職者が増えているのか。
- この状況が企業にもたらす影響が何なのか。
- 影響を受けている状況で、企業は何をすべきなのか。
などといった疑問が生じるのでは無いでしょうか。
「なぜ退職者が増えているのか」に関しては、こちらの動画をご覧いただけたらと思いますが、その他の部分に関しては、次回解説致します。
<執筆>Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
Web: https://note.com/0__/n/nfafa1d6bb582
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