ポストコロナのリクルーティング② ~アメリカの人材マーケット最新トレンド~
前回の記事では、「Great Resignation (大量退職)」がもたらしている現状をデータから読み取る事によって、自主退職者の割合が今までに無い程に大きくなっている事や、地域ごとに失業者の状況が異なる事が分かりましたが、今回は「この状況が企業にもたらす影響が何なのか」という事や、「影響を受けている状況で、企業は何をすべきなのか」といった事を考察しております。
「なぜ退職者が増えているのか」に関しては、こちらの動画をご覧ください。
退職がもたらす企業へのリスク
退職者が出た際に企業側が考えるべきリスクとしては、①残された従業員が直面する様々な問題、②退職者の業務を全うするためのスキル/リソース不足、③そのために発生する仕事のクオリティ低下、④一人あたりの業務が増える事によって発生する時間不足、⑤業務が増えているにも関わらず給与が変わらないため給与が安く感じられる、などといったものが挙げられます。
この事に関しては、日本から派遣されている駐在員の皆さまにも当てはまる部分があり、駐在員の人数が不足している、あるいはローカル採用が進まないなどといった際に一部の人が業務過多に陥ってしまう、などといった事が考えられるため、この様なリスクは優先的に考察する必要があります。
企業側がすべき事
この様な環境の中で企業側がすべき事としては、まず「自社の従業員が退職する理由」に対してデータを基に分析し、それぞれの状況に合ったリテンション・プログラムを確立させる事に尽きます。また、リテンション・プログラムを導入する際の注意点としては、世の中で流行っている手段を闇雲に導入するのではなく、あくまで自社組織の環境に合ったものを用意するという部分にあります。
例えば、もし特定の属性(年齢・性別・出生国など)の従業員の退職が多いのであればDEI(Diversity, Equity, and Inclusion)戦略の確立や見直しを、昇格までにかかる時間が長い様であればキャリアラダーの確立や見直しを検討することが重要となります。
いますぐ取り組める事
今回のGreat Resignationに関しては、退職者の多くが「生活感の見直し」や「バーンアウト」といった要素を強く感じているとされています。それに対して、まず生活感の見直しという観点では、業務スケジュールの調整やリモートワーク/ハイブリッド型の働き方導入などが考えられ、バーンアウトしそうな従業員に対しては、一旦休暇を与えてサポートする事などの措置を取るなどといった事が考えられます。
また、最近は、Perks(Perquisite=特典)が更に重要度を増している様にも感じられますが、それはリテンション・プログラムの一環の中ですぐに取り組める部分であるからと考えられます。Perksの内容としては、Wellness Benefit(健康支援のために一定額使える)、ホームオフィス支援金(モニターなどの購入費用の支援)、教育費や学生ローン支援、無料デイケア(保育施設)の提供などが挙げられます。
また他にも、雇用環境面の改善も重要で、Job Requirementが明確で無い、業務過多にさせてしまっている、業務ゴールが明確で無い、良いフィードバックを与えない、などといった状況を避けるために、これらの問題を認識し改善するという事も、いますぐ取り組める事の一つとなります。
これらの内容は、全て「HR」という専門分野の領域になるため、社内にHRがいない、あるいはHRがいたとしても必要なセクションの専門性を持った人がいない(例: 労務管理はできるが仕組み造りはできない)などといった場合は、社外にそのリソースを求める事が推奨されます。専門家のリードがある中で取り組む事によって、皆さまの企業の雇用環境がよりこのGreat Resignation時代に合ったものとなり、ひいてはアメリカでのミッションを更に前進させる事に繋がるのではないでしょうか。
<執筆>Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP, 中央大学 非常勤講師
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
Web: https://note.com/0__/n/nfafa1d6bb582
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