オフィス再開が本格化!新しい働き方に合わせた「強いオフィス」にするには?
全米でワクチン接種と併せてオフィス再開の動きが進む中、今回はオフィスに戻るためにいま検討すべきポイントをいくつか整理してみたいと思います。
出社したくなるオフィス
本格的なオフィス再開を目指して準備真っ只中の企業も多くいらっしゃるのではないでしょうか。米系企業も再開における方針を続々と明らかにしています。2021年の中盤はどうやらオフィス再開のタイミングが集中しそうです。
一方、今年3月のある業界記事によると世界で72%のオフィスワーカーがフルタイムではオフィスに戻りたくないと回答し、66%がハイブリッド型(オフィス勤務とwork from home (WFH)を組み合わせた勤務形態)を望んでいるとの調査結果がありました。パンデミックが人々の働き方やライフスタイルに長期的な影響を及ぼしたといって良いでしょう。
企業文化を相対的に考えると日本企業は社員が一緒のオフィスで働くことを非常に重視しているとの声も聞こえてきます。出社を促進させたい会社と新たな働く形を求める就業者、そして日米の企業文化の違い。皆さまにおかれてはそれらの狭間で微妙な調整を強いられる難しいポジションにおられることとお察しします。
▶ 勤務体制の見直し
糸口としてはまずオフィス勤務とWFHを組み合わせたハイブリッド型がひとつのソリューションになることは間違いなさそうです。これまでのように出勤日を週5日と決めるのではなく、オフィスに来る必要がある仕事とそうでない仕事を選別して業種や仕事内容に応じて出社日を決めるやり方です。
PwC社が全米企業の133 名の経営層と1,200 名の従業員層を対象に行ったサーベイ結果の一部を以下ご覧ください。経営者の7割が週3日以上の出社を望む一方従業員側は5割未満、そして従業員のおよそ3割が完全リモートワーク勤務を希望すると答えており、立場によってオフィス勤務頻度のイメージにズレが生じていることが見て取れます。このズレをどう擦り合わせて各社に沿った理想の勤務体制に近づけていくかが今後の課題と言えそうです。
経営層側への質問:企業文化を醸成する意味では従業員はどの程度の頻度でオフィスへ出社すべきと思いますか?
Data Source: PwC US Remote Work Survey, Jan 2021
従業員側への質問:コロナがすべて落ち着いた後、雇用者が許すならリモートワーク勤務をどの程度の頻度で希望しますか?
Data Source: PwC US Remote Work Survey, Jan 2021
▶ 仕組みづくり、オフィスづくり
次に、オフィス勤務においていかに効果的に連携やコミュニケーションの活性化に繋がる仕組みを作るかということもキーポイントになりそうです。
オフィスに行ったはいいけれどいつも同じメンバーだったり、会いたい人や話したい部署とすれ違い続けているようではオフィス勤務の効果が薄れてしまいます。またただ座席を間引いてデスクで黙って仕事をしていても効果的とは言えません。出社日の調整もさることながら、オフィスづくりというハード面の充実もオフィス勤務のメリットをサポート出来ると考えられます。
最近Google社が19州に及ぶオフィスやデータセンターに少なくとも$7ビリオン投資する計画を明らかにしました。理由はこれまでよりも一人あたりの面積に余裕を持たせるためだそうです。これは、ハイブリッド型勤務を取り入れるため一日あたりの出社人数は減少傾向にある一方、コラボレーションエリアなど必要とされる新機能をさらに充実させて、これからの時代に合ったオフィスに変えるべく積極的な投資をかけていくということかと思います。
新しい働き方が求められる今こそ、家よりいい!出社したい!と社員が実感できるようなモチベーションや生産性の向上に繋がる新オフィスに整えることを検討されてみてはいかがでしょうか。
とは言っても「でもまだ契約期間中だから出来ることが限られるのでは?」と思われた方も多いと思います。その通り、契約期間中にスペースを使用しながら一部とはいえ工事・リノベーションをするには非常に時間と労力がかかります。既存契約が残っていながらも出来ることとは何か、少し具体的に見ていきたいと思います。
新しい機能を追加
まず導入しやすい方法として、大きな工事なしで家具を中心にレイアウト変更する方法です。例えば従来の会議室をWeb会議向けに改装したり、ウェブミーティングで活用できる一人用の個室(フォーンブース)や遮音性のある素材で囲われたカジュアルな打合せスペース、また一人で集中したい人向けの集中ブース、フリーアドレスにする代わりにキーボードや飲み物のカップなど私物を置いておける小さなロッカーを用意する企業もあります。これまでのように人数分のデスクを確保しなくても良くなれば、デスクを間引いたスペースにこうした新しい機能を加えることでオフィス勤務の効果を最大化することに繋がります。
契約期間中の交渉
米国のオフィス契約は定期借家契約といって元々解約条項が入っていません。契約時に約束した賃料、契約期間、工事費用等はすべて繋がっていて、総合的にその条件だから契約当初の貸し借りが成立したことになります。よって、契約期間中に賃料減額したり面積を減らすなどオーナーにとって不利益な契約条件に変えるためにはオーナー側に損が出ないよう工夫することが絶対条件です。つまり既存契約があっても双方Win-Winの状況にもっていければ契約を巻き直す交渉は不可能ではありません。
例えばNY・マンハッタンでは2021年第1期に空室率が全体平均16.1%(日系企業が多く入居するミッドタウン・クラスAビルの場合11.2%)を記録し、これまで近年の最高値だった9.11後の不況時である2003年第3期の13.9%(ミッドタウン・クラスAビルは9.8%)を上回りました。空室率が上がるとオーナーは既存の優良テナントを確保しようと動きますので、既存契約を見直すチャンスが高まります。逆に言うとマーケットの底が見えてくる頃にはオーナーもまた強気に転じますので交渉ウィンドウを逃さないスピード感が重要です。
パンデミック以降の商業マーケット状況(NY・マンハッタン事例)
Data Source: Commercial Observer
最後に契約期間中の交渉として考えられる例をいくつか挙げてみたいと思います。
① 契約期間を延長してトータルコストで軽くなる(前倒更新)
多くの企業にとってオフィス賃料は人件費の次に大きなコストかと思いますが、例えば契約期間を延長することで既存契約よりも低い賃料で契約を巻き直す交渉が出来るかもしれません。コロナ渦を受けてオーナーは優良テナントの囲い込みに積極的です。またマーケットに下降傾向が見られる今こそ適性条件で再契約出来る可能性が上がっています。
② キャッシュフローに響く!面積を減らして経費削減(前倒縮小更新)
コスト削減も大事だけど、とにかく使っていない無駄なスペースにかかる費用がもったいないと頭を抱える企業様も多いことと思います。例えば契約期間を延長して適正面積に合わせたスペースに移るなど面積縮小することも不可能ではありません。実際に昨年弊社でサポートした交渉では面積を減らして賃料を半分に出来たケースもあります。新しい場所に移動する場合は新しい働き方に合わせた新しいオフィスづくりも比較的取り入れやすいです。
③ 一部違約金を払ってでも来期から一気に軽くなる
中途解約はそもそも多くの契約書に載っていない条項ですが交渉次第では受け入れられることがあります。例えば上述のような交渉においても一部違約金を支払うことで延長期間を短くしたり賃料単価を調整する方法と組み合わせるケースもあります。一時的な支出をしてでも長期的なランニングコストを下げることに重点を置く場合は有効な手段になるかもしれません。
④ サブリースに出して賃料を抑えた場所へ移る
中途解約とは違い米国の契約書にはサブリースの条項が入っていることが多く、サブリースはテナントの権利として認められています。弊社ならではの日系ネットワークを活かして、パンデミック後に日系企業同士のサブリースをマッチングした事例もあります。ただし、パンデミック後サブリーススペースが増えているためサブリースのリスクやデメリットを理解した上でより慎重に決断すべきです。例えばNY・マンハッタンでは全体空室の1/4をサブリースが占めており非常に供給過多なマーケットとなっています。
今回ご紹介したのは一部の手段ですが、弊社では他にも様々な選択肢を視野に入れながら、オフィスに関する悩みを一緒に解決していくコンサルティングサービスをしております。
弊社は日系企業様の米国での社外不動産部を目指して日々活動しております。もし現在、米国オフィスの件でお困り事があればどうぞお気軽にご相談ください。オフィス再開後、皆さまがより強い組織体となってご本業の戦いを続けられるよう、新しい働き方に合わせた強いオフィスづくりをお手伝いさせて頂けたら幸いです。
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