【最新マーケット情報|ニューヨーク】 GAFAの存在感が増すマンハッタン、オフィス市場
テック系企業が米国経済で存在感を増す中、2019年はGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)による大型ディールがニューヨークの商業不動産市場を沸かせました。昨年半ばまでは、WeWorkに代表されるCo-Working SpaceやFlexible Spaceが競う様に物件を賃貸していましたが、昨年後半からGAFAがとって代わった状況です。
不動産仲介業者サビルズが世界30都市を対象にまとめたハイテク都市ランキングでは、サンフランシスコを抜き、ニューヨークが首位に躍り出ました。アートや文化、メディア、商業など世界の最先端を体感できる活気あるニューヨークで拠点を拡大する動きが広がっています。時代の先端を行くサービスを開発・提供する企業にとっては、拠点を構える都市として、ニューヨークの価値を再認識された結果となりました。
背景には、サンフランシスコ・シリコンバレーエリアのオフィススペースの供給のひっ迫と賃料の高騰、生活コスト(住宅賃料)、従業員の賃金の高止まりなどから、ニューヨークの拠点を拡充するハードルが相対的に低くなったこともあると思われます。優秀な人材の確保という点でも、一説にはGAFAはニューヨークの金融系の人材に目を付けていると言われています。
ニューヨークのオフィス市場は2000年から2019年まででClass Aと呼ばれる大型ビルの総床面積は298百万平方フィートから340百万平方フィートに増えました(14.1%、58百万平方フィート増)。ダウンタウンのワールドトレードセンターやミッドタウンの西側のハドソンヤードの再開発による大型の新築オフィスビルの供給と、それらに連動した既存ビルの大規模改装がこの動きを後押ししたようです。
企業別の動きを見ると、Googleはニューヨークのミッドタウンサウスの西側で賃貸していたビルを2010年に購入し、その後も継続的に近隣のオフィスに拡張し続けていました。昨年7月、自社ビルの近隣のハドソンスクエア(Hudson Square) にあるオフィスビルと賃貸契約を結び、契約面積は130万平方フィートに上ります。オフィス拡張のために、2018年に近隣にニューヨークでの自社ビル2軒目となるチェルシーマーケットの建物を購入したばかりでした。マンハッタンに構える同社のオフィススペースは合計300万平方フィートにもなります。これは東京ドーム21個分に相当します。
続いてFacebookは、同年11月にハドソンヤードにある建設中のオフィスビルと賃貸契約を結びました。3つの建物にまたがる新オフィスの契約面積は合計150万平方フィートになります。先のグーグルの大型契約を超える、昨年のニューヨーク市で最も大きい契約となり注目を集めました。ビルオーナーが約45万平方フィートを借りようとしていた弁護士事務所と契約交渉を締結直前で打ち切って、同社と契約したことでも話題になりました。
一方、昨年2月にマンハッタンからイーストリバーを渡ったニューヨーク市クイーンズ区での第2本社の開設を断念したAmazonですが、昨年12月に入って、ハドソンヤード近くに34万平方フィートのオフィスビルを賃貸するとの報道がありました。前回はニューヨーク州からの多額な税優遇を受ける条件が地元の反発を買い断念しましたが、今回は税優遇なしで新規の増床を決めたとのことです。もっとも、前回は25,000人規模のオフィスを予定していましたが、今回は1,500人程度と、その規模は10分の1以下ではあります。
残るはAppleですが、前述の3社に比べて元々のニューヨークでのオフィス規模は小さく、オフィス賃貸という点では昨年は大きな動きは見られませんでした。水面下では何らかの動きがあるのかも知れません。
時代とともに変貌を遂げるニューヨーク。国内外から豊富な資金や優秀な人材が集まり、時代の最先端を肌で感じられる都市として進化し続けています。業界にもよりますが、多くの日系企業にとっても拠点を置く価値がある大都市であり続けるだろうと、改めて認識させられる動向です。
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