「移転オプション」:オーナー都合による強制移転? | Reloredac.com

「移転オプション」:オーナー都合による強制移転?


ここ数年、「急にオーナーから連絡があり、ビル内でオフィスを移転して欲しいと言われたのですが、どのように対応したら良いでしょうか?」といった相談を受けることが増えています。これは、オフィス賃貸借契約書内に含まれる「Relocation Option」(あるいは「Right to Relocate」)と呼ばれる「移転オプション」を、オーナーが行使したために起こったケースが殆んどです。そこで今回は、この「移転オプション」をオーナーが行使した場合に、テナントとしてどのような対応が可能なのかを解説します。

先ず前提として、「移転オプション」がオフィス賃貸借契約書内に含まれており、オーナーが行使した場合、いくらオーナーの都合であっても(例えば、同フロアの大型テナントが増員するため、1フロア全て賃貸することを希望している、など)、テナントは移転を受け入れざるを得ません。

拒否する選択肢がないということは、移転オプションを行使された時点でテナントには交渉の余地が残っていないことを意味します。従い、行使された時点ではなく、移転契約交渉時(あるいはオーナーが移転オプションを覚書に新たに追加しようとした場合には、契約更新交渉時)に、将来的にオーナー都合で強制的に移転させられる事態に備えて、行使後のテナントの権利をしっかりと交渉しておくことが重要です。

弁護士と協業しながらどのように交渉すべきかというと、テナントにとって「移転オプション」がないに越した事はないため、賃貸借契約書のドラフトがオーナー側弁護士から出て来た段階で、先ずは削除するように要求します。ただ、オーナーは、テナントを同ビル内で自由に移転出来るという柔軟性を保持しておきたいため、殆んどのケースでは削除に応じてくれません。故にここからが肝心で、弁護士と相談しながらテナントにとって有利な条件を勝ち取れるように交渉します。

 

削除に応じてくれない場合、具体的には以下のような条件をオーナー側に要求します。

 

● オーナーは、契約開始から数年間は「移転オプション」を行使することが出来ない。

● 現在よりも低層階に移転させることは出来ない。

● 移転先の契約面積は、現オフィスの契約面積の±10%までの範囲内とする。面積が広くなった場合も、賃料は増加しない。一方、面積が狭くなった場合は、それに応じて賃料も減額される。

● 移転に際して発生する費用(設計・施工費用、インターネット・電話線の構内配線、サーバー・電話システムの移設費用、引越し費用、弁護士費用、名刺や封筒など住所が書かれている事務用品の新規発注代、など)は全額オーナーが負担する。

● 移転先スペースは、最新のビルディング・スタンダードの内装材を使用して施工する。

● オーナーが移転オプションを行使してから、実際にテナントが移転先スペースへ移るまでに、少なくとも45~60日以上の猶予をテナントに与える。

● 移転先スペースの内装工事(原則、全額オーナーの費用負担)が完了し、入居可能な状態になってから、実際にテナントが移転して現オフィスをオーナーに明け渡すまでには、少なくとも7~14日以上の猶予をテナントに与える。

● 移転時に使用する荷物用エレベーターの使用料は無料とする。

 

ただでさえ移転プロジェクトは、担当者に大きな負担を掛けるため、通常業務に支障をきたすこともしばしばです。契約途中にもかかわらず、オーナー都合で望まぬ移転を受け入れざるを得なくなった場合に少しでもメリットが出るよう、交渉レバレッジが効く移転契約交渉段階で対策を練って置くことが肝要です。オフィス賃貸契約の商慣習に精通し、商業不動産領域を専門とする経験豊富な弁護士と協業して、是非、「移転オプション」の条件を交渉してみて下さい。

 

オフィスの移転・契約更新に関するお問合せはこちら>>