アメリカの人材マーケットにて良いタレントをキープするには① | Reloredac.com

アメリカの人材マーケットにて良いタレントをキープするには①

前回のコラムでは、在米日系社会の人材マーケットにフォーカスを当て、リモートワークやパートタイムでの勤務を認めるなど柔軟な働き方を認めることによって、スキルや経験が豊富にありながらも就労時間やエリアに制限のある日本語ネイティブスピーカーの人材マーケットが開ける可能性について言及しました。


今回は在米日系企業が抱えることの多い「ローカル社員を雇ったものの、すぐに辞めてしまう」「優秀なローカル社員をなかなか雇用できない」という、日本における人材マーケットではあまり直面しない課題について、なぜそのような問題が起きるのか、またどのように解決し得るのかを考察してみました。

 

期待値の違い

ローカル社員の部下が短いスパンで、または突然、辞めてしまい、新たな人材確保に苦労された経験のある駐在員の方は少なくないと思います。数回の面接を経て雇用し、仕事を教えてさぁこれから、というタイミングであっさりと離職されると精神的ダメージも大きく、ローカル社員の採用に慎重になってしまうこともあるでしょう。

下のグラフにあるように、日本の「終身雇用」は崩壊したと言われて久しいものの、まだまだ一社の勤続年数が10年以上の日本に対し、アメリカは半分以下の4.2年というデータが出ています。他の先進国と比較しても、アメリカは群を抜いて転職のスピードが速いことが分かります。

 


(参照:2018年国際労働比較 | JILPT)


このデータに年代別はありませんが、若ければ若いほど転職スパンも短く、働き盛りと言われる30代では1社における平均勤続年数は2年程度というデータもあります。アメリカでは「長く働いて欲しい」と思うこと自体が雇用主と非雇用主の期待値のミスマッチなのです。


アメリカの労働者が転職を繰り返す理由は数多くあるかと思いますが、代表的なところとしては、日本が従業員に仕事を割り当てる「メンバーシップ型雇用」に対し、アメリカは職ありきで人をはめこむ「ジョブ型」雇用のため、一つの会社やポジションでキャリアを積み、キャリアアップのために転職をすることが人材の流動性の根底にあるかと思われます。

 

Back to Officeの影響

第一回のコラムで取り上げた「Great Resignation (大量退職)」では求職者優位の就労マーケットについてお話しましたが、その中でも、ある程度のキャリアと体力があり、自分のスキルの活かし所をきちんと把握している即戦力の30代、40代の人材は、「会社」だけでなく、「働き方」をも選ぶ選択権を持っています。

彼・彼女らにとっては会社・仕事は自身の人生を豊かにする手段のひとつ。我慢をして働くという考え方はあまりなく、自分の理想のワークスタイルや家族との時間のバランスを求め、転職をすることはごく普通の流れなのです。

コロナ禍が落ち着きつつある中、フルリモート勤務からリモートとオフィス出社を組み合わせたハイブリッド型勤務が主流となる中、将来的には、コロナ禍以前のようなフル出社を検討している会社もあるかと思います。もちろん、リモートよりも対面で行った方が成果が出やすい職種もあるかと思います。しかし、働く場所や時間に関する方針が例外なく一律にすべての従業員に適用される時代は、恐らく終わりを迎えました。

雇用主と従業員の「働き方」に対する考え方のミスマッチも、人材流出の大きな要因の一つになっていることが考えれます。

 

では、どうしたら良いのか!?

上記の理由などから、日系企業において「優秀なローカル社員の採用と長期的な雇用」を実現するのは簡単なことではありません。ではどうしたら良いのか。二つの提言をさせて頂きたいと思います。

一つ目は、抽象的な言い方になってしまいますが、皆さまには「アメリカを理解する」ことにトライして頂けたらと思います。
アメリカには日本とは全く違う文化・慣習・宗教観があります。野球とソフトボールは似ていますが、ソフトボールの選手が、野球をしようと思っても即戦力にはなれないでしょう。まずは野球のルールを知ることから始めるはずです。それと同様、日本で培ったやり方だけでは、アメリカの人事戦略を成功させることは難しいのです。

一番効率的かつ効果的なのは、夜間・週末などに大学院や近くにあるコミュニティーカレッジ(様々な講座が開講されています)に通い、多様な価値観に囲まれて多くの時間を過ごすことだと思いますが、働きながらその時間を捻出するのは容易ではないかもしれません。その場合は、例えば、近所のアメリカ人と交流を深め、BBQなどをして、彼・彼女らのバックグランドを理解することから始めてみましょう。職場での交流では見えてこない、アメリカ人の人生の価値観をうかがい知ることができるでしょう。


次回は、二つ目の提言、「ウェルネス、ベネフィットの充実」についてお話したいと思います。

 

<情報提供・監修>Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP, 中央大学 非常勤講師
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
Web: https://note.com/0__/n/nfafa1d6bb582

 

 

 

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