今年の振り返りと今後の展望 | Reloredac.com

今年の振り返りと今後の展望

今年最後の商業通信となる今回は、コロナ禍から本格的に社会が回復した2022年をオフィス・リースの観点で振り返り、来年以降の展望について考えてみたいと思います。

 

オフィスの在り方の変化

まず現在のオフィスへの出社率についてです。全米主要10都市平均で12月14日現在48.2%となっております。弊社が参考にしているのは全米大手セキュリティ会社と提携するビルの入退館管理データです。日々多くの日系企業様とお話している中で「週平均2-3日程度出社する人々が多い」という肌感覚にも一致しています。下図のとおり、出社率は昨年12月にオミクロン株の影響で大きく下げたあと今年前半にV字回復しましたが、最近はほぼ横ばい傾向が続いています。在宅勤務を取り入れた“ハイブリッドワーク”がいよいよ定着し一般化してきた1年だったと言えそうです。

Source: Kastle Systems' Weekly Occupancy Data

また、特に今年後半以降、対面でのミーティングや出張、ネットワーキングイベントが一気に増えました。当社がLAで運営するホテルでも日系企業の方々の会議室やケータリングサービスのご利用が今年後半より増えています。「みんなで集まろう」という気運が盛り上がっているのを肌で感じておられる皆様も多いのではないでしょうか。人々が実際に会ってコミュニケートする価値を再認識し行動に移した1年だったとも言えそうです。

一方コロナ禍以降顕著になった離職率の高さや人手不足の状況は、引き続き大きな経営課題として存在しています。

このような変化に合わせて、オフィスのあり方は大きく変わってきており、企業は「社員を中心にオフィスを考えるようになってきた」と実感しています。

多くの経営者は、「オフィスは、社員が出社したいと思える場所にしたい」と考えており、次のオフィスのレイアウトやロケーションを考えています。よりよい人材確保のために郊外のオフィスから都心部への移転を検討する例もあります。今まで、オフィスの短期更新などで結論を先延ばしにしてきた企業もようやく動き出した感があります。

あるニューヨークの大手商社は、今年いち早くスペースを大幅に削減して新しいデザインを取り入れたオフィスに移転されました。これまでオフィスの契約期限が来るとそのまま更新される例が多かったのですが、最近はこの事例のように、スペース縮小とデザイン一新をした移転の例が増えてきています。

社員にとっての魅力を高めると同時にサイズを縮小してコストダウンを図る、社員と会社のwin-winな状況を実現したい、という考え方が多くの企業の共通項として浮かび上がってきている印象です。

 

マーケットの動向

オフィス不動産マーケットは、エリアによって緩急はありますが今年後半から概ねさらにスローダウンしてきている印象があります。

パンデミック発生以降、リモートワークによる需要縮小から空室率が上がり弱まっていたマーケットが、今年後半からリセッション懸念の高まりやテックや金融など一部の企業で始まっているレイオフに後押しされ、弱含みの傾向が加速している様相です。例えばニューヨークでは10月の契約面積が前月比40%の落ち込みを記録してます。

また企業からの賃料収入が減り銀行への返済に苦しむオフィスビルオーナーが増えてます。ビル内の既存オフィスを分割して何とか候補スペースを捻出するなど、オーナーやエリアによっては、一段上の譲歩を見せる交渉の余地が増えたように感じます。

【直近5年の空室率と賃料の推移(サンフランシスコエリア)】

Source: Co Star

上記グラフは今後の予測を含めた賃料と空室率をサンフランシスコエリアの直近5年の推移を例に示しています。その他エリアや詳細については11月時点のまとめ(こちら)をクリック頂きご参照いただければと思います。最新情報については、お近くの商業担当までお気軽にお問合せください。

 

今後の展望

このように大きく世の中が変化する中、これからオフィスについて検討される企業様には「今まで以上に早めに検討をスタート」されることをお勧めします。「自社にとってどのようなオフィスが最適か」という課題を検討するためには、出社頻度を含めた働き方そのものであるソフトを固めた上で、必要な面積、デスク数やその種類、またウェブミーティング用ルームの要否などのハード面を検討する、というこれまでにはなかった新しいプロセスを踏む必要があるためです。

オフィスの新しいトレンドの一例として、これまで以上にふんだんに観葉植物を取り入れる企業が増えています。福利厚生や環境への配慮といった要素もこれからますます意識されていくように思います。シェアオフィスの利用や郊外にサテライトオフィスを設置する動きも今後さらに活発化しそうな気配です。

その他多様な検討要素はありますが、ポジティブな面としてはまだオフィスマーケットが回復する兆しが見えていない中、ビルオーナーが条件面でフレキシブルに交渉に応じやすい環境であることは間違いなく、理想のオフィスを実現しやすいマーケットです。単純な条件交渉の枠を越え、いかに御社に寄り添って御社にとってのあるべき姿の検証にとことん付き合ってくれるか、というパートナー(ブローカー)選びの視点も重要になってきています。

弊社はお客様とともに考え、お力になれればと望んでおります。2023年も引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。どうぞ良いお年をお迎えください。

商業不動産部 NYHQ 鈴木 友宏

 

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