【最新オフィス・マーケット情報|ニューヨーク】 ゾーニング規制緩和によるオフィス街の再開発が期待されるマンハッタン・ミッドタウンイースト地区 | Reloredac.com

【最新オフィス・マーケット情報|ニューヨーク】 ゾーニング規制緩和によるオフィス街の再開発が期待されるマンハッタン・ミッドタウンイースト地区

賃料相場の上昇基調が持続し、空室率も一桁台を記録するなど、相変わらずマンハッタンのオフィス市況は好調です。その好景気を牽引するのは、IT・メディア・広告といったクリエイティブ関連企業に人気のミッドタウンサウス地区とダウンタウン地区、また米国における民間再開発事業として全米史上最大規模を誇り、三井不動産アメリカも参画することで日本でも注目を集める「ハドソンヤード(Hudson Yards)」を中心としたミッドタウンウエスト地区です。

こうした中、近年影が薄くなっていたのが、長年、世界有数のオフィス街として知られ、現在でも多くの日系企業が拠点を構えるミッドタウンイースト地区です。マンハッタンの中心部に位置し、交通のハブであるグランドセントラル駅から近いため、オフィス街としては抜群のロケーションを誇るにもかかわらず、ここ数年、ソニーやボストン・コンサルティング・グループ、ウェルズ・ファーゴといった大企業によるマンハッタン他地区への流出が続いています。これは、ミッドタウンイースト地区のオフィスビルの築年数が平均70年を超えており、現代のグローバル企業が求める広大な1フロア面積や、最新鋭のインフラ・アメニティー設備を持つモダンなオフィスビルが比較的少ないことが大きな要因です。

ブルームバーグ前ニューヨーク市長時代の2012年、旧態依然のオフィスビルの建て替えを促進するため、ミッドタウンイースト地区のゾーニング規制緩和が提案され、1年以上にわたって市議会で議論が繰り広げられたものの、結局、実現には至りませんでした。しかし、このままでは大企業が競争力のある他都市へ流出してしまうことに危機感を覚えたデブラシオ現市長が、ゾーニング規制緩和を成し遂げようと再び立ち上がりました。

2015年5月、先ずは「お試し」とばかりに、ミッドタウンイースト地区の一部である42から47ストリートにかけて、ヴァンダービルト&マディソンアベニューに囲まれる5ブロック圏に限定し、「条件付き」でゾーニング規制の緩和が承認されました。

グランドセントラル駅に隣接するこの小さなエリアには、第二次世界大戦前に建てられたモダンとは言い難い中規模オフィスビルが建ち並んでいます。しかし、この「ヴァンダービルト通り区画変更(Vanderbilt Corridor Rezoning)」によって承認された特例ゾーニング規制緩和エリア内に限り、不動産開発業者は公共施設・インフラを改修することを条件に、法規で定められている容積率を越える大型ビルを建設することが可能になりました。これにより、「ビリオネア通り(Billionaires’ Row)」と呼ばれ、セントラルパークを見下ろす形で超高級コンドミニアムが建ち並ぶようになった57ストリート沿いのような現象のオフィス版が、ヴァンダービルトアベニュー沿いでも形成されることが期待されています。

 

「ヴァンダービルト通り区画変更」による特例ゾーニング規制緩和エリア

 

その中で現在最も注目を集めており、ミッドタウンイースト地区のオフィス街のイメージを一変するとまで言われているのが、42&43ストリートとヴァンダービルト&マディソンアベニューに囲まれるフルブロックに再開発されている超大型オフィスビル「ワン・ヴァンダービルト(One Vanderbilt)」です。

完成は2020~2021年を予定しており、63階建て、延床面積175万スクエアフィート(16万2,600平米)、尖塔までを含めた高さは1,500フィート超(460メートル)と、ミッドタウンイースト地区では1930年に完成したクライスラー・ビルディング、ミッドタウン地区全域でも1931年に完成したエンパイア・ステート・ビルディングの高さを超える初のオフィスビルになる計画です。

ワン・ヴァンダービルトはグランドセントラル駅構内から直接アクセス可能という交通の利便性の高さに加え、2万2,000から最大4万7,000スクエアフィート(2,044~4,366平米)という広大な1フロア面積、最高20フィート(6.1メートル)を誇るフロア天井高、地下レストランやトップフロアのカクテルラウンジ、自然光が差し込む路面オープンエリアなど、グローバル企業のヘッドクォーターに相応しいハイエンドなインフラ・アメニティー設備を完備するように設計されています。

不動産開発業者は、マンハッタン内のオフィスビル最大手オーナーであるSL Green Realty Corp.です。SL Green Realty Corp.は、法規で定められた容積率以上の超大型ビルの建設許可をニューヨーク市から得る代わりに、ワン・ヴァンダービルトの建設費とは別に、総額2億2,000万ドルを掛けてグランドセントラル駅及びその周辺エリアの公共交通インフラをアップグレードすることを約束しています。

完成するのは5年近く先であるにもかかわらず、既に大手商業銀行であるTD Bankが20万スクエアフィート(1万8,600平米)以上のスペースを賃貸することが決定していることからも、ワン・ヴァンダービルトへの期待の高さが伺えます。完成後にはエンパイア・ステート・ビルディング、クライスラー・ビルディングに代わり、ミッドタウン地区全域の新しい象徴的なビルになると言われています。

 

ワン・ヴァンダービルトの完成予想図 (クレジット:SL Green Realty Corp.)

 

ワン・ヴァンダービルトの他にも、東急不動産米国子会社が参画し、フルブロックでパークアベニューに面するオフィスビルとして約50年振りに再開発される「425 パークアベニュー」や、総額2億4,000万ドルを掛けて既存ビルの高層・モダン化を計画する「390マディソンアベニュー」など、ミッドタウンイースト地区のオフィス市況に再び活気をもたらすであろう、新たなオフィスビルの再開発計画が持ち上がっています。

マンハッタンの中心地に立地することは他地区には決して真似することの出来ない大きなメリットであり、ミッドタウンイースト地区には元々ホテルやレストラン・バーといったエンターテイメント環境も充実していることから、競争力のあるモダンなオフィスビルが建てられさえすれば、世界有数のオフィス街という地位も盤石化するだろう、と言われています。「ヴァンダービルト通り区画変更」によるオフィス市況の活性化プロジェクトが成功を収めれば、早ければ2017年にもミッドタウンイースト地区全域のゾーニング規制緩和がニューヨーク市によって承認されると噂されています。

続々と新たなオフィスビルが再開発されることが予想されるミッドタウンイースト地区のオフィス市況の今後に要注目です。

 

ミッドタウンイースト地区 グランドセントラル駅周辺のClass Aオフィスビル・マーケット動向

 

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